外務省 国際機関人事センター

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国際農業開発基金(IFAD) インドネシア事務所 プログラム・オフィサー
坂田有弥 氏

坂田有弥さん

1.国際機関で働くまでの経緯を教えてください。

国際協力や国際機関での勤務に興味を持った時期やきっかけ

振り返ると、小中学生の時に、父が地元で携わっていた地域活動のなかで国際交流をする機会を通して国際的なことに関心を持つようになりました。高校は県立で外国語学科がある学校に進学し、集中的に英語を学びました。国連での仕事に興味をもったのは、高校生の時で、当時、MDGsが採択され、関心があった欧米のアーティストが貧困問題に対してチャリティ活動を行う等をしていて惹きつけられました。時を同じくして、沢木耕太郎の小説「深夜特急」にはまり、発展途上国(特に南アジア)に対して強い関心を持つようになりました。高校の英作文の課題で将来の夢を英語で書く宿題があり、私自身の夢として「国連で働きたい」と拙い英語で書き、クラスでそれが発表されて恥ずかしかった思い出があります。

国際機関での就職を志した動機

国連についてなんとなくの関心を持っていましたが、具体的に国連での就職を志して準備するようになったのは、在ジンバブエ日本大使館で専門調査員及び外務省任期付職員として勤務している中、多くの国連職員と関わる機会があったことがきっかけです。国連が行う途上国支援や仕事内容を知るうちに、また大使館職員として国際機関職員と日本のODAで行われるプロジェクトを支援するなかで、国連機関側になってプロジェクトの直接のマネジメントをすることを志すようになりました。

現在の勤務先(特定の国際機関)を選んだ理由

大学学部時代から開発経済学とアフリカの小農経済を研究しており、このバックグラウンドを活かせる組織としてIFADでの勤務を希望しました。

JPO派遣制度に応募するにあたり、準備した点、心がけたことなど

知り合いの先輩JPOや国際機関職員の方にいろいろ話を聞いて、国連での仕事をイメージしました。また、応募書類については先輩JPOや英語ネイティブのエディター等に読んでもらい、改善点についてアドバイスしてもらいました。

2.現在の業務について教えてください。

  
2021年、ナイジェリアで若年層のアグリビジネスを支援するプロジェクトのモニタリング。      2021年、ナイジェリアで若年層のアグリビジネスを支援するプロジェクトのモニタリング。

具体的な主な業務内容

2022年、ナイジェリア北部でプロジェクトの女性裨益者にIFADのプロジェクトからどのように裨益したか、インタビュー。       2022年、ナイジェリア北部でプロジェクトの女性裨益者にIFADのプロジェクトからどのように裨益したか、インタビュー。

IFADは被支援国政府に対して農村開発のための資金を融資しています。被支援国政府が実施する農村開発プロジェクトのモニタリングとアドバイスが私の主な業務内容です。決められた期間内に想定された裨益者に対して適切なサービスが届くよう、IFADの融資で被支援国政府が実施するプロジェクトをモニタリングしています。

具体的には、調達リクエストの内容確認、プロジェクトの内容変更の相談とアドバイス、資金執行状況の確認等、プロジェクトが滞りなく運営されるための全体的なアドバイスをする仕事に関わっています。他に、新プロジェクトのデザインやIFADが実施するグラント・プロジェクトのモニタリング・フォローも行っています。プロジェクトの確認やモニタリングのため、平均して1〜2ヶ月に1回ほど農村部に出張に行きます。現在は、インドネシア、マレーシア、パプア・ニューギニアのプロジェクトをフォローしています。

2022年、ナイジェリア北部でのプロジェクトの女性裨益者へのインタビュー後の一コマ。       2022年、ナイジェリア北部でのプロジェクトの女性裨益者へのインタビュー後の一コマ。

3.学生時代についておしえてください。

学生時代(中高、大・大学院)に積極的に取り組んだこと

大学から大学院(博士課程)にかけて、一貫して開発経済学を学びました。実は第一希望の大学に行けなかったのですが、進学を決めた大学・大学院で良い恩師、友達と夢中になれるトピック(開発経済学やアフリカ地域研究)に出会うことができ、国際協力について体系的に勉強することができました。 とはいえ、国際機関で働くための特別な準備をする(例えばインターンをするとか、第二外国語をきちんと学ぶとか、留学するための努力をする等)という努力はしておらず(もしこの努力をしていたらもっと早期から上を目指して効率的にキャリア形成できたと思いますが!)、特に大学の1〜2年目はかなり自由奔放に生きており、アルバイトをしながら当時の趣味(旅、音楽)に突き進んでいました。今考えると、若くて無知な頃に世界を一人旅したことで、ハードシップの高い国や地域に飛び込んでいける柔軟性がついたと思います。また、アルバイトの経験は、様々な学歴やバックグラウンドを持った仲間と一丸となってチームで働く良い練習になったと思います。 大学3年目から国際協力や開発経済学への熱意が高まり、開発経済学のうちアフリカに焦点をあてて研究するために修士課程に進学しました。また修士課程のうちに、博士課程で若手研究者を育てることを目的とした研究費を得ることができたので、アフリカ地域経済を継続して研究するために日本で博士課程に進みました。この時点では、国連でのキャリアに憧れはあったものの、将来はアフリカの地域経済や国際協力を教える大学教員になると思っていました。大学院に進学してからは、1年の約半分をアフリカで過ごし、博士課程中に南アフリカの大学で研究員として受け入れてもらえることになり、南アフリカやジンバブエでフィールドワークを基とした研究をしていました。また、調査内容は修士課程からアフリカ小農の経済活動に関するものでした。 振り返ると、「好きこそ物の上手なれ」で、ぼんやりとした国際協力や国連への関心はあったものの、その時々で夢中になれるものや必要だと思うことに全力で取り組んでいたところ、結果的に国連でのキャリアに繋がりました。国連では何か自分が「売り」に出せるものがあることがキャリア形成に重要だと感じています。私の場合は現場主義、アフリカ・小農研究ですが、学生時代に何か自信が持てるものを一つでも持つと、後にどのようなキャリアに進むとしても、役に立つのではないかと思います。

インターン経験があれば、応募までの経緯とインターン経験について

インターン経験はありません。

大学や大学院などの進学先を選んだ理由(国内外、英語圏、仏語圏、欧州、アジアなど)

学部、修士、博士と日本の大学に進学しています。大学院の進学先は、私自身の専門性を追求して決めました。3年間の博士課程在籍中の半分(1年半)は南アフリカ大学の客員研究員として受け入れてもらいました。

4.アドバイスをお願いいたします。

10~ 20代で国際分野でのキャリアを目指している方へのアドバイス

2022年11月、コートジボワールに於いて、担当するナイジェリアのプロジェクトがグッド・プラクティスとして展示に参加。 2022年11月、コートジボワールに於いて、担当するナイジェリアのプロジェクトがグッド・プラクティスとして展示に参加。

自分の好きなことを極められるよう、全力投球すると自分の「売り」とできるものが出てくると思います。悩みすぎず、自分がその時々で最善だと思ったことにアクションを起こしてみてください。国際機関に限らず、多くの会社や組織で、専門性だけでなく、仕事を遂行できる協調性や耐久性が重要なように思います。若いうちにいろいろとチャレンジして失敗の経験を重ね、幅広い視野を持つことが重要と思います。もう大して若くはない現在の私自身もまだ試行錯誤していますが、ストレス耐性は少しずつ付いてきたと思います。