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UNIDOウィーン本部 アグリビジネス部 プロジェクトマネージャー
水野 真鈴 氏

水野 真鈴さん
1.国際機関で働くまでの経緯を教えてください。

国際協力や国際機関での勤務に興味を持った時期やきっかけ

大学時代にエクアドルに語学留学したことがきっかけで発展途上国の人々の暮らしを良くすることに貢献したいと思うようになりました。

国際機関での就職を志した動機

国際協力のキャリアを志し、民間、大学院、政府開発機関(JICA)と色々な職場を経験しながらキャリアを積んでいくにつれ、より大きなレベル・スケールで仕事ができる国連機関への就職を志すようになっていきました。

様々な選択肢がある中で、国際機関を選んだ理由

海外勤務(民間企業の駐在)、海外大学院、日本の政府開発機関(本部・フィールド)を経験してきた中で、より国際的な環境で働きたいと感じ、国際機関に挑戦しました。結果的に、国際機関が一番自分の力を発揮できる場だと感じています。

現在の勤務先を選んだ理由

これまでのキャリアで一貫して途上国の経済発展・ビジネス発展・中小企業支援に関する業務を行ってきたため、最も親和性が高い機関として現在の勤務先に応募しました。

他セクターから転職することで役立った経験(民間、NGO・NPO、省庁など)

これはたくさんあります。民間企業ではどのような業務でも形にこだわらずに柔軟に考え最適解を出すこと、結果をデリバリーすることを学びました。また海外で営業をしていたために国際的なコミュニケーション能力がつきましたし、途上国でビジネス経験は今の業務での案件形成の際に大いに役立っています。一方で、省庁で勤務したことで、端的でわかりやすい書類を作ること、国際援助に関するお金の流れや大きな潮流、立ち上げから終了までのサイクルなどについて学ぶことができました。現在の国際機関での業務ではこれらの学びをフルに活かして働いています。

JPO派遣制度に応募するにあたり、準備した点、心がけたことなど

私は3回目の応募で合格しましたが、応募するたびに今まで足りていなかった経歴や実務経験がカバーされていることを意識しました。応募書類に関しては、なぜ自分に適正があるかを端的に文章で示すことを心がけました。

2.現在の業務について教えてください。

平均的な一日の流れ

本部出勤、平均日に2-3件のズームミーティング(自分がマネージしているプロジェクトのチームやカウンターパート、またはドナー等とのミーティング)があり、それらのための資料作りが必要であれば事前に準備します。並行して同僚がオフィスに立ち寄ったり、メール・電話が各方面から来るため都度対応します。上司との相談・合意が必要な事柄に関しては、話すポイントをまとめた上で上司のオフィスに行き、うまく捕まれば手短にポイントを伝え了解を得ます。16時を越えると面談等は少なくなるため、大きいイベントのための資料作成やレポートの執筆など集中が必要な作業をします。18時を越えるとほとんどの職員が帰宅しているため、可能な限り早く帰るように心がけています(が、私も含めた東アジア人がたいてい事務所に最後まで残っています)。そのほか、可能な限り色々な同僚とランチやコーヒーに行き、プライベートな関係も築くようにします。

具体的な主な業務内容

大きく以下に分かれます。 ①現在進行中のプロジェクトの監理。複数のプロジェクトを担当して、定めた内容にそってプロジェクトの活動を行っていきます。調達や採用等の仕事も自分の責任で行うため、フォローアップする内容は多岐に渡ります。プロジェクトチーム(本部及び現場の同僚)と頻繁にミーティングをして進捗のフォローアップを行います。 ②新規プロジェクト形成。進行中のプロジェクトに加えて、どんどん新規プロジェクトを立案・形成していかなければ生き残っていけないので、多くの時間をこれにも費やしています。具体的には、特定の国や地域でプロジェクトの内容を考え、そのプロジェクトに賛同してくれそうなドナーに対するプロポーザルを作成・提出します。プロポーザルが採択されれば、新規プロジェクトとして立ち上げを行います。 ③組織内の作業依頼対応。所属する課や部レベルでハイランク職員のためのブリーフィング資料を作成したり、自分たちが力を入れる分野の取り組みを内部・外部に発表したりします。組織から必要とされる人材になるにはこういった組織内の貢献も求められますし、自分の専門性を示すことにも繋がるので、大事な業務のひとつです。

国際機関で働く上で意識していることや心がけていること

個人的には、とにかく自分の同僚となる人たちとは本部・フィールドを含め社交的でなく心から良い関係を作るように心がけています。また、自分が組織から必要とされる人間になるように、組織として重要なプロジェクトを形成したり、部・課で力を入れるイニシアティブに携わったりするように心がけています。最後に、日本での職場と比べて自分で考えて判断する範囲が広い(一人ひとりが自立して仕事ができるプロフェッショナルという前提)ので、上司に頼らずに考え、上の判断が必要な時も選択肢と自分の意見を合わせて持っていくようにしています。

国際機関で働く前に準備や対策をしておけば良かったこと

何かの分野における強い専門性があることが望ましいです。私は文系(外国語学部)でキャリアも商社で営業、開発機関でプロジェクト監理…とジェネラルな仕事をしていたので、色々なことがなんとなくわかる一方、〇〇の分野の専門家、といえるものがなく、そういったものがある人は非常に強みがあると思います。

これまでの経験で国際機関での勤務に役立っているスキルや経験

① Immersion / integration = 溶け込む力、現地に適応する力
それぞれの国・地域の人々が大事にすること・しないこと、良しとされる・不要な行動(言動)、得意なこと・不得意なことなどを理解し、好きになり、受け入れることが重要なソフトスキルだと思っています(日本の考えに凝り固まっていてもなかなかうまくいかない)。
② Interpersonal skill = 対人コミュニケーション能力(語学力含む)
日本語の直訳でなく、表現の仕方、ニュアンス、ボディーランゲージ、フィジカルコンタクト、ユーモアなども含めたコミュニケーション能力が大事かと思います(国際機関でも多くの日本人が苦手としているところだと思います)。
③ 危機察知能力、トラブルシューティング能力
この活動はこのまま進めて大丈夫か、この人の発言は信じてよいか、この注意事項は大げさに話しておくべきか、この要求に対してはあえて譲らず言い張るべきか、聞き流しておくべきか、この交渉に関しては足元を見られないようにプランBを匂わせておくか、といった、後々にトラブルに直面しないようにうまく状況を切り抜けるための判断力が非常に重要なスキルだと思っています。また、実際にトラブルが起きてしまった時に迅速に解決する能力も非常に重要です。

海外勤務の中での気分転換法やリラックス法

週末はスポーツや芸術、語学学習など趣味に打ち込んで楽しんでいます。

ワークライフバランスの保ち方

同僚からは働きすぎずにアフター6を楽しむようによく言われ、なるべく平日の夜にも予定を入れて切り上げるようにしています。

スキルアップを目指していること

プロジェクトマネジメントの力で開発プロジェクトの効果を最大化することができると信じているので、より良いプロジェクトマネージャーになれるように、日々の仕事で難しい相手との面談を行ったり、大人数に対してプレゼンする等の場数を踏み、スキルアップを目指しています。

問題に直面したときの対処法

個人的な経験則では、問題が発現した瞬間はとても困ったように思えても、色々な対処法を考えながら進めていくと次第に大した問題でなくなってくる(なんとかなる)ことがほとんどで、あまり慌てずに、やりながら考えることにしています。

言語や必要とされるスキルの習得について。英語の習得方法について、また、英語以外の国連公用語やその他言語の必要性について

英語に関してもその他の国連公用語にしても、できればできるほど有利です。但し、業務で使えないレベルだとできてもあまり意味がないので、やるならプレゼンやディスカッションをできるレベルまでがっつりやる、やらないなら英語のスキルアップに集中する、が良いのかと思います。

水野さんの写真1 2022年 休暇は楽しむ(オーストリアの雪山でスキー)     

2022年 休暇は楽しむ

3.学生時代についておしえてください。

水野さんの写真2 2022年 ガーナ企業訪問・視察      

2022年 ガーナ企業訪問・視察

学生時代(中高、大・大学院)に積極的に取り組んだこと

外国語学部だったので、専攻する言語の上達に取り組んでいました(その過程で留学して、開発援助の道を志すようになりました)。

学生時代にしておいて良かったこと

発展途上国への留学をしたことで、開発援助の道を志すようになったので、本当に良かったです。

大学や大学院などの進学先を選んだ理由(国内外、英語圏、仏語圏、欧州、アジアなど)

英語圏の留学経験がなかったため英語の勉強も兼ねて英語圏、且つ私の場合は開発の実務者になりたかったので、2年かかる米国よりは1年で修士号が取れる英国を選びました。大学選びに関しては、ビジネスと開発を結びつけるコースがあった大学で、かつキャンパスの雰囲気が個人的に気に入った大学(都会でなく少し田舎)を選びました。

学費や生活費の工面について(奨学金、貯金など)

民間企業で5年間働き、1年間の留学に必要な貯金をしました。そのうえで奨学金に応募しましたが合格することができなかったので、自分の貯金で学費・生活費を工面しました。

4.今後のキャリアパスについて教えてください。また、異なるライフステージ毎に直面
  
するであろうイベントとの両立について教えてください。

任期があるポストに就いていることについてや、職探しについて

ここ7-8年、一ポストにつき2-3年の任期の仕事を続けていますが、その都度新しいことに挑戦しているので、個人的にはこれまではあまり苦労や不安は感じていません。一旦組織の中に入ると、内部で色々なポストの情報などにアクセスでき、ある程度選択肢を考えたり、次の計算もすることができるので、2-3年ごとに切られる、という感覚よりは、2-3年毎にステップアップしていく、という感覚です(但し、これから40代に入っていくにつれて何に直面するかはまだ分かっていません)。一方で、内部ポストだけでなく外の組織に対しても常にアンテナを張るようにしています。

日本の雇用形態とまったく違う契約形態で勤務を継続することについて

個人的には今まではあまり苦労を感じていません。但し、国際機関だと誰も自分の契約更新などについて面倒を見てくれないので、必ず自分で次のポストを探し、現行の契約が終わる前に次の契約がスタートするようにペーパーワークを早め早めにしたり、人事部等をプッシュすることが必要です。

ストレスマネージメントについて(体調管理など)

体の健康と心の健康はリンクしているので、最低週一回は思いっきり運動をして心身健康でいることを常に心がけています。仕事をしていてなんとなく不安感やストレスを感じているときは、何が心配で不安を感じているのかを認識して、その不安が和らぐようなフォローアップ(同僚に状況を共有するなど)をするようにします。

5.アドバイスをお願いいたします。

水野さんの写真3 2021年 エジプト事務所の同僚と      

2021年 エジプト事務所の同僚と

20代で国際分野でのキャリアを目指している方へのアドバイス

国際援助の道を志す方であれば、個人的には、発展途上国での業務経験を積むことを強くお勧めします。20代の間に数年間、発展途上国で実際に働くことを経験されれば、(仮に開発の実務でなかったとしても)発展途上国の開発のために仕事をするということがどういうことが肌感覚でつかめると思いますし、状況によっては語学力や貯金といった必要なことも同時に満たせると思います。その中で、働きながら一番やってみたいと思うことを見つけ、大学院でその分野を勉強すると、主体的に勉強することができ且つ一貫性のあるキャリアになるのかなと思います(大卒後修士号を取得してから実務経験を得るパターンと、実務経験を得てから修士号を取得するパターンがあるかと思いますが、私は後者でした)。

10代の方へのアドバイス

私は10代の時には海外に行ったこともなければ貧困問題への関心等も全くなかったので、もし10代の時点で既にそういったことに関心があるのであれば、素晴らしいアドバンテージだと思います。何らかの形で発展途上国に行ってみたり、日本で外国人の友人を作って英語を学ぶなどのことができたら最高だと思います。