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国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)アンゴラ事務所 コミュニティ・ベースド準保護官
前野 裕子 氏

前野 裕子さん
1.国際機関で働くまでの経緯を教えてください。

国際協力や国際機関での勤務に興味を持った時期やきっかけ

高校生でブラジルに交換留学し、貧富の差を目の当たりにしたとき国際協力に関係する仕事をしたいと思ったためです。

国際機関での就職を志した動機

主にNGOでキャリアを積んできました。裨益者とじかにかかわって仕事ができるのは楽しかったのですが、もっと政策的な大きい枠組みで問題に取り組みたいと思ったため国際機関を志望しました。

現在の勤務先(特定の国際機関)を選んだ理由

難民、児童保護にかかわる仕事を10年ほどしていたためUNHCRを志望しました。

他セクターから転職することで役立った経験(民間、NGO・NPO、省庁など)

NGO、NPOで緊急支援を含むプログラムに携わった経験、特にNGO側でUNHCRのプログラムを管理した経験は役に立ったと思います。

JPO派遣制度に応募するにあたり、準備した点、心がけたことなど

JPO経験者やUNICEF、UNHCRの現職で働く方々にお話を伺ったり、書類作成のアドバイスなどいただきました。

2.現在の業務について教えてください。

前野さんの写真1 2022年 世界難民の日 フットボールトーナメント ©UNHCR / Manuel Mbunga     

2022年 世界難民の日 フットボールトーナメント
©UNHCR / Manuel Mbunga

平均的な一日の流れ

  •   8:30 出勤、メール確認
  •   9:00 コミュニティーセンターに出発。
  • 10:00 難民コミュニティリーダーとの会議、カウンセリング、ヒアリング業務
  • 14:00 オフィスに戻り昼食
  • 15:00 パートナーとのオンライン会議や難民保護に関する書類の作成など
  • 17:30 退社

具体的な主な業務内容

アンゴラの首都ルアンダには約3万人ほどのコンゴ共和国、ルアンダ、ブルンジ、西アフリカからの難民や難民申請者が生活しています。UNHCRアンゴラは3つの難民のコミュニティーセンターを起点に支援活動を行っています。

保護官の業務内容は多岐にわたりますが、個別の保護ニーズの高いケースマネージメント(子どもの保護、法制度へのアクセス、ジェンダーに基づく暴力(GBV)からの保護)に加え、コミュニティの現状やニーズを把握し、プログラムやUNHCRの年間計画に反映させること、難民保護に関する政策アドボカシーやプログラム計画立案を政府やパートナーと協同しながら行います。

国際機関で働く上で意識していることや心がけていること

他のチームメイトや裨益者に敬意をもって接することです。

国際機関で働く前に準備や対策をしておけば良かったこと

第三外国語の資格習得、英語の文章作成、プレゼンテーションの能力をもっと上げておけばよかったです。

これまでの経験で国際機関での勤務に役立っているスキルや経験

様々な裨益者と直接仕事をしてきた経験、コミュニケーションスキルです。

海外勤務の中での気分転換法やリラックス法

家族と過ごす時間を大切にすることです。アンゴラは温暖な気候なので海に行ったり、プールに行ったりしています。

ワークライフバランスの保ち方

国連は概してワークライフバランスに対する理解が高いと思います。産休や育休、休みも取りやすく勤務形態も柔軟に対応してもらえるケースが多い印象です。

スキルアップを目指していること

第二言語習得、難民法や難民保護、コミュニティ参加法についてより深い知見を得ることです。

これまでの勤務経験で一番大変だったこと、辛かったこと

スタッフの移動が多いため、赴任ひと月にして上司が不在になってしまったことです。

問題に直面したときの対処法

ピンチはチャンスと思い粛々とやるべきことをやり、同時に他のチームメイトとのコミュニケーションを大切にすることです。

言語や必要とされるスキルの習得について。英語の習得方法について、また、英語以外の国連公用語やその他言語の必要性について

英語のアウトプット(文章作成、プレゼン)が非常に必要です。英語ができるのは当たり前なので第二、第三言語ができると仕事の幅、応募できる仕事が増えると思います。

前野さんの写真2 2022年 世界難民の日 フットボールトーナメント ©UNHCR / Manuel Mbunga     

2022年 世界難民の日 フットボールトーナメント
©UNHCR / Manuel Mbunga

3.学生時代についておしえてください。

学生時代(中高、大・大学院)に積極的に取り組んだこと

海外でのボランティア、留学などによく参加しました。高校ではブラジルに留学、大学でもイギリスに留学したり、ボランティアでタイに滞在したり、休みのたびにバックパッカーとしてさまざまなところを訪ね歩きました。これらの経験により多様なバックグラウンドを持つ人々がいる職場に違和感がなくなじめるようになったと思います。またブラジルに留学してポルトガル語を習得したことが今のアンゴラでのポジションでも役立っています。

学生時代にしておいて良かったこと

とにかく興味のあることをとことんやったこと、いろいろな人と交流して深く対話する機会を設けたことです。

インターン経験があれば、応募までの経緯とインターン経験について

大学卒業後国内の難民および難民申請者を支援するNPOでインターンをさせていただき、今の仕事をする上でのベースになっています。また大学院在学中にもイギリスの難民をサポートするNGOでインターンさせていただき難民の方々の居住環境についての質的調査を行いレポート作成に貢献しました。

前野さんの写真3 2022年アフリカこどもの日イベント ©UNHCR / Manuel Mbunga      

2022年 アフリカこどもの日イベント
©UNHCR / Manuel Mbunga

大学や大学院などの進学先を選んだ理由(国内外、英語圏、仏語圏、欧州、アジアなど)

国際基督教大学を選んだのは、実家から近く、開放的で国際的な雰囲気が気に入ったためです。授業の選択の幅が広かったことも魅力的でした。在学中の留学先として英国のサセックス大学を選んだのは人類学と参加型開発について学びたかったためです。大学院は英国のブラッドフォード大学に進学しました。アフリカの地域研究ができ、草の根レベルでの平和構築について学びたかったためです。幸いにもロータリー平和フェローとして希望の大学院進学をロータリーに全面的にサポートしてもらいました。

学費や生活費の工面について(奨学金、貯金など)

大学時代は奨学金の貸与と給付両方を使いました。時間があるときに様々なアルバイトをしながら海外に行くお金をためていました。大学院進学に関しては生活費、渡航費も含めすべてロータリーの奨学金に補助してもらいました。ロータリー平和フェロープログラムは非常に素晴らしい奨学金なので多くの方に知ってもらいたいです。

4.今後のキャリアパスについて教えてください。また、異なるライフステージ毎に直面
  
するであろうイベントとの両立について教えてください。

任期があるポストに就いていることについてや、職探しについて

UNHCRはほとんど任期があるポストばかりだと思います。そのため常に次のポストを探し続ける必要があります。これを不安に思う方も多いかと思いますが、私は自分でキャリアパスや行きたい地域や国を選択できるのでとても面白く気に入っています。

職探しについて

職探しは常に付きまといます。空席をチェックして自分が応募できそうなところにとにかく応募しています。もともと取りたい人が決まっている場合、国籍の要件でとれる国や性別が限られている場合などポストによってさまざまなのでとにかくたくさん応募してみるのがいいと思っています。

日本の雇用形態とまったく違う契約形態で勤務を継続することについて

私は日本の企業で働いたことがないためあまり比べられませんが、国連は契約期間が限られている分自由度も高いと思います。

時として過酷な、そして危険な地域での勤務について(家族の同伴なし、子どもの学校の問題、配偶者やパートナーのキャリアなども含め)

過酷な地域、危険地での勤務も多く存在しますが、ライフステージによってどこに応募するかは自分と家族の決断次第だと思います。私の夫も国連職員で残念ながら夫婦そろって同じ国で国連の仕事に就くのはなかなか容易ではありません。そのため片方のキャリアをお休みしたり、国連以外の機関で働いたりすることになります。現在夫は無給の特別な二年間の休みを取得して、企業、ピアノの調律、自動車整備など新しいことにチャレンジする予定とのことです。子供の学校も言語の問題がありますが、さまざまな環境で学んでほしいという思いから現地校にいれ、一からポルトガル語を学んでいます。

ライフステージ毎のキャリアの選択について

ライフステージによってキャリアの選択は変わってきますが、ご家族、ご自分と相談し、何を大事にするかプライオリティを決める必要があると思います。私たちは子供4人おり皆小さいため家族で一緒に移動することを選択しました。今後どうなるかはその都度考えていけばいいと思っています。

国際機関職員以外の選択肢について

国際機関以外の選択肢は常に開かれています。国際機関には政府系の組織、シンクタンク、大学やNGOなどで仕事をしてまた戻ってくるケースも多いため、国連機関だけに固執してはいません。

ストレスマネージメントについて

とにかくうきうきするようなことをやることにしています。よく笑いたくさん家族との時間を持つことがストレスマネジメントです。

5.アドバイスをお願いいたします。

前野さんの写真4 2022年 UNIQLO 古着配布 ©UNHCR / Manuel Mbunga      

2022年 UNIQLO 古着配布 ©UNHCR / Manuel Mbunga

20代で国際分野でのキャリアを目指している方へのアドバイス

あまりアドバイスをできる立場にいませんが、とにかくやりたいこと、興味があることを一生懸命やってみることが大事だと思います。するとおのずと思わぬ形で点と点がつながったりするような気がします。いろいろな国で官民問わず経験を積んでいくのがいいと思います。