国際機関での勤務には大学生の頃から興味を持っていました。特に、大学2年生の頃に栄養学の選考を選んだ時に、将来栄養学の知識を使って世界中の人たちの健康状態を向上出来るような仕事に就きたいと思うようになりました。
修士号を取得した後、NGOで、アメリカ先住民族を対象にした生活習慣病患者(特に、糖尿病、心臓疾患、肥満など)への医学的栄養療法・栄養プログラムの指導に関わりました。その後、ネバダ州政府でCDCと生活習慣病を人口レベルで予防するためのプログラムの評価やマネージメントに携わりました。CDC からの助成金を受けて、散髪屋さんを利用した黒人の高血圧患者へのアウトリーチを行うプログラムとその評価を行ったりと、イノベーティブなプログラムをニーズが高い人々を対象に提供出来ることが出来たのは自分にとって良い経験になりました。また、修士を終えてすぐにCDCと仕事が出来たことで、プログラム評価のノウハウやその骨組みについて学ぶことが出来て、健康プログラムを提供するだけでなく、その過程や結果、そしてインパクトを評価する事の重要性を理解することが出来ました。
JPO としてアンマンに赴任したのとほぼ同時にジョンズホプキンス公衆衛生大学院で博士課程に進む事が決まりました。当時はコロナ渦真っただ中だったので、オンラインで授業を受けることが出来て必修科目はすべてアンマンから取得することが出来ました。授業で学んだことをすぐに現場で適応出来たことで、今後どのような研究をすれば現場で働いている医療提供者、患者さん、そして、医療組織の役に立つのかを考えさせられました。仕事と学業の両立は正直大変でしたが、自分が志した学問の知識をさらに深められる事はとても楽しく、特に疫学や統計学の勉強をしている時は時間があっという間に過ぎてしまいました。また、国際保健分野での先駆者でもあり、研究者・人生の先輩でもある、たくさんの経験を持った上司や大学院の教授軍から直接指導を受けることが出来きたのは、自分の励みになりましたし、人生の財産になったと思います。
パレスチナ難民の妊婦の貧血や微量栄養素欠乏症(Micronutrient deficiency)を予防するため、WHOから推奨されているマルチビタミンを UNRWA クリニックで提供するプログラムとその評価を目的とした介入研究が2022年にヨルダンで始まりました。この介入研究を始めるのに約3年間かかったのですが、その間、たくさんの話し合い、準備、調査、データ解析などが行われました。2023年は、このヨルダンでの研究結果を元に、今後どのようにしてマルチビタミンをUNRWAの保健サービスの中に組み込めば良いかを検討していくことになります。
私は小中高と、テニスをしていたので、スポーツと学業を両立する事を常に意識していました。ただ、当時の日本では、スポーツと学業を両立する風潮があまりなく、高校に入った時にスポーツと学業の両立がしやすい環境が整っているアメリカの高校に留学することを決めました。大学にはテニスでスポーツの奨学金を取って進学しました。大学でも、やはりテニスと学業の両立は大変でしたが、栄養学という学問に出会えたことで、その後の自分のキャリアを真剣に考えるようになり、学習意欲も向上したように思います。
大学では、週末はアメリカ国内のテニス遠征に行く傍ら、栄養学に興味を持ち、平日は夜遅くまで、チームメイト達と図書館に残って勉強に勤しんでいました。アメリカの栄養学は科学としての成り立ちが強く、この分野での研究も盛んに行われていました。栄養学の知識を使って、医療現場で人の役に立ちたいと思うようになり、大学卒業後は半年間の実習と資格認定試験を経て、アメリカ国家管理栄養士の資格を取り、病院で臨床管理栄養士として働きました。
管理栄養士として臨床現場で患者さん一人一人と向き合う中で、人口レベルでの健康改善を促すにはどうすれば良いのかもっと勉強したいと思うようになりました。カルフォルニア大学ロサンゼルス校公衆衛生大学院では、栄養疫学・公衆衛生学の研究が盛んに行われていましたし、国連機関と仕事をしたことのある教授や生徒が多かったので、研究に携わるのと同時に国際機関で仕事をする事も現実的に視野に入れて考えるようになりました。また、世界中から集まる同世代の優秀な学生たちと毎日切磋琢磨しながら一緒に勉強出来た事は自分にとって良い刺激になりました。
私は高校の時からアメリカで生活する機会に恵まれ、十代の頃から優秀な人材には投資するというアメリカの風潮を肌で感じていました。そして、将来学業で(しかも、自分のネイティブの言語ではない英語圏で)、そして世界中から集まる優秀な人材の中で、自分の身を立てるには、人一倍努力し続けるしかないと覚悟を決めていまし た。大学生の頃から、将来大学院に進学する事を考えていたので、成績はオールAで、Dean’s List などに載るように人一倍勉強には時間を費やしました。そして、アメリカの大学の基準では、成績だけでなく、課外活動の実績、ボランティア経験、研究経験、推薦状なども重視されていたので、自分が参加出来そうな栄養学に通じた活動を見つけ、出来るだけ参加しました。カルフォルニア大学ロサンゼルス校公衆衛生大学院で修士号を取得した際には、大学院側が一年目は70-80%、二年目は 100%の奨学金を出してくれました。それでも、ロサンゼルスの物価は高くて生活が大変だったので、パートタイムでUCLA大学病院で管理栄養士の仕事をしたり、研究のアシスタントの仕事などをして、なんとか生活費を稼いでいました。ジョンズホプキンス公衆衛生大学院での博士課程では、大学側が100%奨学金を出してくれました。私のキャリアは色々な方々からのサポートがあって成り立っているのだとつくづく感じています。そして、今まで投資してくださった方々の期待に応えられるような仕事をしていけるように、今後も努力していこうと思います。
結婚・出産・子育てなど、人生の中で生活が劇的に変化するイベントがありますが、私の中では仕事・学業との両立は必修でした。そのため、主人や家族には協力してもらいながら仕事・学業と子育ての両立をしています。
特に、10代のうちに、時間が経つのも忘れて夢中になれる事や得意な事、そして興味がある事をたくさん見つけて色々な経験を積んでほしいです。若い時に、一つでも良いので、自分が物事と深く向き合い掘り下げて考える経験をする事で、将来、色々な国や地域に行って仕事をする時に、色々な角度から物事をとらえて柔軟な考え方が出来ると思います。また、生活の中に自分が得意な事や楽しいと思える事があると、人生が豊かになると思います。