空席公告に応募し、書類審査を通過し、面接まで残るショートリストの段階においては、候補者は数名から十数名までに絞られた状況にあり、面接の結果は選考過程において大きな比重を持ちます。面接は国際機関側と直接やりとりができる貴重な機会であり、自らをいかに印象づけるかが重要となります。知識、教育、経験が主として学歴や過去の業績や著作で判断される一方で、コミュニケーションにかかわる能力と性格や人柄は面接で考察されます。
面接は候補者と面接官数名で行われ、45 分間~1時間半前後行われます。多くの場合、面接は電話又はスカイプで行われますが、本部などで対面面接が実施されることもあります。
電話やスカイプによる面接時間は早朝や真夜中になることもあります。
国際機関の面接は、大きく分けて、志望動機、志望する国際機関についての知識等の基本的な質問、コンピテンシー、技術的質問から構成されています。それぞれの質問の特性を理解した上で準備を行い、面接に臨むことが求められます。
- 一般的な留意点
- 電話面接では面接官の反応が見えにくく、早口になりがちです。話すペースに気をつける必要があります。
- 質問をよく理解し、質問の内容に沿って話すことが基本です。質問が聞き取れない場合は、確認してから回答しましょう。また、電話回線が悪い等の技術的な理由で聞き取りにくい場合は、リスニング力・理解力不足と誤解されないよう、予め面接官に伝えておくというのも一案です。
- 長すぎる回答は好まれません。前置きをせず、質問に対してストレートに答えましょう。面接官が知りたい情報が回答に含まれていない場合は、追加で質問がなされるので、一度にすべて答えようとして、質問以外のことも織り込む必要はありません。積極性を示したつもりが、否定的な印象を与える結果とならないよう、気をつけましょう。
- 面接は候補者自身のことを問うものであり、所属する組織のことを問うものではありません。
特に、自らが関わった業務説明や業績について回答する場合には、主語を“We”ではなく“I”とす
るよう、心がけましょう。
- 突飛と思えるような質問がありますが、とっさにどのように対応するかを見る目的でなされています。落ち着いて、筋の通った回答を述べましょう。
- 一般的に、国際機関は、仕事と趣味等の両面に興味を有するバランスの取れた人物が好まれます。また、ストレスに耐えうる人物であることが求められ、ストレス解消法につき問われることがあります。面接では、バランスの取れた人物という印象を与えるように気をつけましょう。
- 面接の最後に、面接官側に対して何か質問があるか問われることもあるので、質問を用意しておくとよいでしょう。質問はポストに関するものが望ましく、着任後半年間の最優先事項は何ですか、応募先ポストに採用されれば直面することになるチャレンジは何ですか等が質問として考えられます。どのような手当を受けられますか、毎日何時頃に仕事が終わりますか等の質問は面接の場ではなく、別の機会にするようにしましょう。
- 面接後、どのような質問を受け、どのように答えたかをメモに残しておくと良いでしょう。
- 基本的な質問
- 志望動機は必ず聞かれます。応募している国際機関、地域・国、ポストを選んだ理由を明確に述べましょう。候補者が応募した機関に何をもたらすのか、応募したポストでどのような貢献が出来るのか等という聞き方をされることもあります。
- 応募している国際機関の活動に関する質問もあります。これは、応募している国際機関の活動内容をきちんと理解しているか、十分な関心を持っているかを問うものです。国際機関の政策や重点分野、関連する報告書等を調べ、準備しましょう。
- 応募したポストのある国の政情、経済状況に関する質問や応募した国際機関がその国で果たすべき役割について、候補者の考えを問われることがあります。常に国際情勢に関心を持ち、面接前には最新の状況をフォローし、自らの立場を考えておくことが必要です。
- 応募したポストが管理職レベルである場合、管理職としての経験、部下のやる気を引き出す方法、パフォーマンスが悪い部下の指導等につき質問がなされ、管理者能力も問われます。
- コンピテンシー・ベースト・インタビュー
- コンピテンシー・ベースト・インタビューとは
コンピテンシー・ベースト・インタビューとは、過去の具体的行動の事例をもとに、行動の特性を明らかにし、同じような状況に置かれた際の行動を予測する面接手法です。資質や能力を見ることを狙いとしており、知識を問うているわけではありません。過去の失敗や性格の弱さに関連する質問がありますが、面接候補者を不利な立場に追いやる目的で行うものではありません。これらの質問は、過去の経験でどのように対応し、そこから何を学んだかについて聞き出すことを目的としています。
- コンピテンシーとは
国際機関が求める要素がコンピテンシーという形で明確化されています。国際機関によって、
名称が異なることもありますが、国際機関が候補者に求める資質や能力がコンピテンシーです。候補者は、面接において、過去の事例とそれに対する行動について挙げて答えることが求められ、国際機関は候補者がコンピテンシーを有するか否かを判断することとなります。
ポスト毎に求められるコンピテンシーは異なります。どのコンピテンシーが応募するポストで求められているかについては、空席公告で確認することができます。
【例】国連事務局のコア・コンピテンシー
(1)Communication、(2)Teamwork、(3)Planning & Organizing、(4)Accountability、(5)
Creativity、(6)Client Orientatioin、(7)Commitment to Continuous Learning、(8)Technological
Awareness
- 準備方法
応募しているポストに求められるコンピテンシーを調べ、コンピテンシー毎に肯定的及び否定的な経験談を挙げられるように準備しておくことが重要です。主張したいポイントを抽出し、それを表すのに適格な具体的事例を考え、2、3分間を目安にストーリーを語れるよう準備しましょう。
- 注意すべき点
コンピテンシー・ベースト・インタビューの狙いは資質や能力を見ることであり、過去の行動の是非を問うものではありません。例えば、仕事の期限を守れなかったことはあるかという質問に対しては、その原因に対してどのように分析したのか、そして、改善するためにどのような対応をしたのかをみようとしています。
過去の失敗例を挙げるよう求められた際に、そのような質問の意図を理解せず、「そのような経験はない」と回答することは得策ではありません。たとえ、そのように回答をしても、面接官はコンピテンシーの有無を確認するため、同様の質問を繰り返すことになります。社会人として誰もが一度は経験していることを聞いているだけですので、回答すること自体に後ろ向きにならず、柔軟に対応しましょう。過去の失敗例のような否定的な経験を結果的には肯定的なものにしたということが言えれば問題ありません。
- 技術的質問(technical questions)
- 技術的質問とは
コンピテンシー・ベースト・インタビューとは別に、ポストに必要な専門性を有しているか判断するために、技術的質問がなされます。具体的には、専門に関する学術的知識、応募した国際機関の活動等に関連する具体的な事象についての説明や意見が求められます。
- 準備方法
国際機関の空席広告でポストに必要な技術的能力を確認し、関連する国際機関の活動内容、重要課題、取り組み、採用されれば関与することになるプログラムの内容、組織全体におけるプログラムの位置づけ等につき、インターネットや書籍等を利用して情報収集を行いましょう。
- 注意すべき点
技術的質問に対して答えられないのは致命的であり、十分な知識を有していないと見なされる可能性があります。ただし、全く回答が分からない場合は、曖昧に回答し、専門性を疑われる結果となることは避けるべきであり、正直に「分からないが、今後勉強する。」と答えるのも一つの方法です。
- 質問例
上記1.から4.を踏まえ、以下の質問に回答できるかチェックしてみましょう。
- 志望動機に関する質問
応募ポストへの志望動機、国際公務員になりたい理由
応募先の国際機関を選んだ理由
応募したポストの業務内容にどのように貢献できるか
応募ポストに選ばれなかった場合、どうするか
- コンピテンシーに関する質問
多忙なスケジュールやワークロードを管理するにはどうすればよいか
チームメンバーと協力して職務を遂行した経験例をあげよ
提案が上司に拒否された場合、どのように対処するか
他の者と意見の相違がある時にどのように対応するか
様々な文化や宗教をもった多国籍な人たちの中で、どのようなことに気をつけて人間関係を築いていくか
- 経歴、専門性、国際機関に関する質問
専門知識、取得した資格、著作物等の内容に関する質問
基本的なパソコンのソフトウェア(ワード、エクセル等)を使って仕事ができるか
前の勤務先の業務内容、退職理由
現在の勤務先が大切にする価値観とは何か
今後のキャリア開発についての考え
応募した国際機関及び部署の組織、プロジェクト、課題等
民間部門と公的部門との違い
これまでの業務でうまくいった(いかなかった)例とその原因
第二外国語のレベル
- その他の質問
自己PR、自分の長所・短所(性格のどこが国際機関に向いているか等)
意志決定をするときの方法
外国での生活経験
着任までに必要な期間はどのくらいか
危険な地域での勤務に対する心の準備ができているか
仕事でのストレスの管理・克服方法