通っていたカトリックの学校では奉仕活動が盛んで、紛争や自然災害の影響を受けた子どもたちに募金を贈っていました。また、自分自身が阪神淡路大震災に被災したこともあり、人道支援の必要な状況にある子どもたちにより一層興味を持ったのかもしれません。高校生の時には、大学に進んだら国際関係を勉強したいと思っており、将来の就職先の選択肢として国際機関も考えていました。
大学院の時に日本ユニセフ協会のプログラムを通じてUNICEFガーナ事務所の子どもの保護セクションでインターンしたことがきっかけで、特に子どもの保護分野でのキャリアを志望するようになりました。
保護や子どもの保護でのキャリア構築を決心した時に、同分野での国際的なポジションがあるのは、基本的にNGOか国際機関(特にUNICEF、UNHCR、IOM、Peace Keeping Mission等)でした。NGOでの勤務中は、より裨益者に近い現場で活動し、その意義も感じていた一方で、中央政府と協力して国レベルの制度構築に寄与することにも魅力を感じていたので、国際機関に挑戦しようと思いました。
民間:日本の民間企業の勤務を通じて身に着けた一般的なビジネススキルは、多くの場面で役立っています。効率性、資料の質など自分の最大限を知っているので、国際機関では状況に合わせて働き方を調整しています。例えば事務所のマネジメント層に関わる仕事の時は、ロジカルに、効率的に進めることを意識しますが、コミュニティーと関わるときは、時間をかけて関係構築を重視して働くこともあります。
NGO:国際機関の多くはNGOとパートナシップを結んで活動を実施しています。NGOとの良好な関係構築には、NGOの事情を理解していることがとても役立ちます。例えば、UNHCRの突然の依頼がどれほどパートナーNGOのオペレーションに影響を与えるか想像できるのは重要なことだと思います。
私の場合は、応募資格を満たしてからは、少し時期尚早かもしれないと思っても受験し続けました。それがよい戦略かはわかりませんが、応募の時期になると毎回キャリアを見直し、転職をして具体的にプラスの経験を積んだり、語学のスキルを向上させたり、客観的に自分のアピール点を増やしていくことを心掛けました。
日によってかなり異なりますが、外出の日と事務所にいる日の例を記載します。
コミュニティーアウトリーチに行く日:8~9時事務所で最終確認→9~2時アウトリーチセッション。難民を担当する政府機関、NGO、UNHCR各部署から難民に提供するサービスの情報共有。→2~3時事務所に帰る。ランチ。3~5時メールの確認。特に個別に支援が必要な難民の子どもや家族のレフェラル(紹介)が来ている場合、データベースで難民の情報を確認し、パートナーNGOに情報共有してアセスメントと必要な支援を依頼し、所定のファイルに記録する。
事務所での作業が多い日:8~9時メール確認、返信。9時~11時Community Based Protectionのコーディネーションミーティングに参加。難民を担当する政府機関、NGO、UNHCRからの活動アップデートと、課題を共有。→11~1時パートナーNGOから受け取った個別の子どもの保護ケースのアセスメントレポートを確認。2週間に1回10レポート程度受け取る。必要なフォローアップを同時に行い、難民データベースを更新する。1~1時半ランチ、1時半~3時政府あてのレター作成し、国境を跨いでケニアへの移動の必要な難民の子どものケースについて協力を要請。4時~5時、月次報告書に今月の活動内容を要約して記載。チームメンバーに確認を取る。
2023年2月 400人以上の難民が集まったコミュニティーアウトリーチにて。
柔軟でいることを心掛けています。これまでの環境は、赴任国のスタッフと働くことが多かったので、なるべく日本の常識は持ち込まずに、赴任国のスタッフの働き方に合わせるよう努めています。
時間を設けて報告書や研究などを読む時間がなかなかとれないので、あらかじめもう少し集中して勉強しておきたかったです。
プロジェクト管理業務の際に日本でもよく他人に依頼したタスクのフォローアップや品質管理を行っていましたが、その際に身に着けた、フォローアップの仕方(どのようなツールで、どのようなトーンで、など)は今でも役立っています。
パートナーや猫と過ごすこと、おいしいものを食べに行く、散歩するなど。 ケニアは基本的に快適ですが、スムーズに物事が進まないフラストレーションは溜まるので、定期的に国外に気分転換に行くことは心掛けています。また、ひとりひとりの難民の課題に寄り添っていると、UNHCRとしてどうすることもできない場面に遭遇することが多々あります。解決策はなくても同僚と共有して共感しあったり、事務所のカウンセラーに話をするなどして、メンタルヘルスには気を付けています。
これまで子どもの保護に注力してきましたが、他のプロテクション分野(GBV、Legal Protectionなど)も知識をつけたいと思っています。
長年働いているスタッフにアドバイスを求めることが多いです。(過去に同様の問題を経験していることが多いため。)
私は最初の修士までは日本で過ごしましたが、英語についてはある程度勉強した後は、強制的に英語を話さなければならない環境(ホームステイ、英語での授業等)に身を置くようにしました。また、フランス語習得は未だに課題ですが、仕事で使えるようになれば勤務地(主に仏語圏アフリカ)が確実に広がります。今の事務所に限定していえば、ケニア人の同僚や難民でスワヒリ語を話す人が多いため、スワヒリ語もできるとよいです。
2022年12月 難民データベースシステムアクセス付与のためのパートナーNGO研修にて。
通常の学生生活に加えて、国際交流の機会があれば積極的に参加しました。日本の大・大学院では、所属の学部は大多数が日本人で、語学以外は日本語での授業したが、他学部からの単位取得の制度なども活用して、英語での授業によく参加していました。
TOEFLの対策と受験
日本ユニセフ協会の大学院生向けのプログラムを通じてユニセフガーナ事務所の子どもの保護セクションでインターンしました。活動内容はこちらです。(https://www.unicef.or.jp/inter/inter_exp21.html (外部リンク))
ジュネーブの大学院まで長期海外生活経験はなかったのですが、欲張って英語だけでなくフランス語にも触れたいと思い、仏語圏を検討しました。ジュネーブは国際機関の本部へのアクセスが良く、私の通った大学院は国際機関からよく講師を招いていたので、キャリア構築にもプラスになると思いジュネーブの大学院にしました。カリキュラムが英仏バイリンガルだったので、英語での発言も許容されていたのがよかったです。また、スイス人は少なく、基本的に留学生から成る大学院で、様々な国出身の同級生がいたことも魅力の一つでした。
スイス留学時は、経団連国際教育交流財団より奨学金をいただいており、加えて日本食レストランでのアルバイトで生活費を補っていました。 (経団連留学報告 https://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/ishizaka/report/2010c.html (外部リンク))
契約期間を考えると不安に駆られますが、自分で数年ごとに国やポジションを選んでキャリアを構築できること、常に新しいことを学ぶ姿勢でいられることなどはポジティブな側面だと思います。
パートナーも元々人道支援を行う機関にいたので、仕事への理解は得やすいと感じています。今は私のキャリアを優先してもらっていますが、パートナーのキャリア構築とのバランスを取りながら、今後は柔軟にどう生活するか(危険地に行ってR&Rで帰ってくる、家族同伴の勤務地にする、等)継続して話し合わなければと思っています。
保護・子どもの保護の分野で働く限り、今のところ国際機関を優先したいとは思いますが、状況に応じて他の組織を検討することもあると思います。
2022年6月 難民の子どもケニアの子ども皆が参加するInternational Day of African Childのイベントにて
私が10代20代で国際機関を目指していた時は、いろいろな先輩方の記事やお話を参考にして自分のキャリア構築を考えていました。昔よりは、情報も入手しやすくなったかもしれませんが、それでもまだまだ国際機関職員の内情はわかりづらいと思います。積極的にいろいろな国際機関の先輩方に話を聞いてみて、行きたい国際機関、なりたいポジションを模索してみてください。