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旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)の概要

平成24年3月

1.設立根拠

 安保理決議第827号(1993年5月25日採択)により、国連憲章第7章に基づき、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY:International Criminal Tribunal for the former Yugoslavia)の設立を決定。決議の付属書として同裁判所規程が採択。

2.設立の背景

 1991年以降、旧ユーゴ領域内における紛争の激化に伴い、集団殺害(ジェノサイド)や「民族浄化」等の重大な国際人道法違反が発生した。これに対処するため、安保理は、1993年2月22日、(1)これらの国際人道法違反に対して責任を有する者の訴追のための国際裁判所を設立すべきこと、(2)設立する裁判所の詳細につき事務総長が報告書を提出することを決議し(決議第808号)、事務総長は、裁判所規程を含む報告書を提出した。右を受けて、1993年5月25日、安保理は上記報告書を承認し、右裁判所規程に従って各国があらゆる措置をとるべきことを決定した(決議第827号)。

3.概要

(1)所在地、職員数、予算

所在地:ハーグ(オランダ)
職員数:1,039名(2010年6月現在)
予 算:301,895,900ドル(2010-2011年)

(2)裁判所の権限(裁判所規程第1〜10条)

 1991年1月1日以降、旧ユーゴ領域内において行われた重大な国際人道法違反について責任を有する者を訴追する権限がある。具体的には、(イ)1949年ジュネーブ諸条約に対する重大な違反行為、(ロ)戦争の法規又は慣例に対する違反、(ハ)集団殺害、(ニ)人道に対する罪の4類型の犯罪を扱う。訴追される者は自然人であり、犯罪の実行者に加え、実行を命じた者、扇動した者等も訴追される。国内裁判所との関係では、ICTYが優越する管轄権を有する。

(3)裁判官の資格と選出方法(裁判所規程第12条)

(イ)常任の裁判官は16名、任期は4年(再選可)。

(ロ)裁判官は、徳望が高く、各自の国で最高の司法官に任ぜられるのに必要な資格を有する法律家でなければならない。裁判部全体の構成にあたっては、国際人道法と人権法を含む、刑法と国際法における裁判官の経験を然るべく考慮しなければならない。なお、裁判官は国際司法裁判所(ICJ)判事と同等の待遇を受ける。

(ハ)国連事務総長の要請により、各加盟国及び常駐オブザーバーが提出した候補者から、安保理が協議の上、候補者リストを決定し、総会に送付。総会は、右リストに基づき、選挙を実施。なお、同一国から2名の判事を選出してはならない。

(4)活動状況(2010年9月現在)

被起訴者数:161名

(イ)進行中:35名

(内訳)
上訴審中16名、第一審公判中18名、予備審理中2名

(ロ)審議終了:126名

(内訳)
無罪放免13名、有罪確定:64名(移送待ち5名、移送済25名、刑期終了31名、刑期中死亡3名)、当事国へ移管13名、死亡又は起訴撤回36名(身柄移送前に起訴撤回20名、公判前に死亡10名、身柄移送後に死亡6名)

 なお、逃亡中であった2名(ムラジッチ被告及びハジッチ被告)が、2011年6月及び7月に逮捕・移送されたことにより、被起訴者のうち身柄未確保の者はなくなった。

(5)完了戦略

(イ)ICTYは、当初から時限的な国際機関として設立されており、安保理決議第1503号(2003年8月28日)は、2004年末までにすべての捜査を終了し、2008年末までに第一審審理を終了し、2010年にすべての審理を終了するため、あらゆる可能な措置をとることを要請していた。

(ロ)この間、ICTYとしても、手続き規則の改正等により効率性増大に努めてきており、特に、重要なハイレベルの政治家、軍指導者の審理に重点を置き、中位クラスまでの被告人は旧ユーゴ地域の国内裁判所への移管を進めてきた。

(ハ)一方、裁判所の完了に向けて、2009年から、安保理の下に設置されている旧ユーゴ・ルワンダ国際法廷(ICTY・ICTR)に関する非公式作業部会において、両裁判所完了後に残すべき機能(残余メカニズム)について検討が開始され、残すべき機能の範囲、メカニズムの開始時期、構造等を中心に議論が行われてきた。

(ニ)2010年末までに全ての審理を終了することができなくなったとの見通しが明らかになったことを踏まえ、2010年12月22日、安保理は、ICTY・ICTRの業務を2014年末までの完了することを要請し、ICTY・ICTRのための国際残余メカニズムの設置を決定する決議第1966号を採択した。

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