神田 匡(ただし)さん
国連開発計画(UNDP)
アジア太平洋局 プログラム・アナリスト
漠然と国際機関というのも選択肢としてある、と考え始めたのは大学4年生の時にガーナのNGOでインターンシップをした時です。就職も決まっており、働き始めたらあまり長く休みを取ってアフリカに行けるような機会もないだろうということで行ったのですが、先進国にはない空気感や雰囲気が好きになり、途上国に関わる仕事をしたいと思うようになりました。
大学は日本の大学の法学部です。学生時代は特に留学することもなく、就活後にガーナに言った以外は普通の学生生活を送って普通に就職しました。
4年ほど働いたのち、キャリアを変えたいと思いアジア経済研究所開発スクールを経てジョンズホプキンス大学の大学院に留学しました。
日本にいた時は、証券会社で合併や買収のアドバイザリー業務を行っていました。大学院在学中は米州開発銀行やコンサル会社、NGO等でインターンをしていました。大学院卒業後はドバイのプライベートエクイティファンドで勤務しており、中東地域の農業セクターにフォーカスして案件生成、実行に携わっていました。
ドバイにいた時にJPOを受けました。実は妻がニューヨークに移ることが決まっていたので、ニューヨークで勤務できる仕事を探していたのです。UNDPは国際機関と直接選考する形で、最初からTORと赴任地が決まっているので、その中のニューヨークのポジションに絞って応募し、面接を経て決まりました。
UNDPのアジア太平洋地域における戦略策定、他の部署との調整、国際金融機関など外部の機関との折衝などを行っています。
途上国の成長、民間資金・技術の重要性の高まり等、国際開発を取り巻く環境は変化してきていますので、その中で長期的にどういった関わり方をするか考えたいと思っています。
私の場合、大学院にいた時は世界銀行やアジア開発銀行など、様々な国際機関に応募しましたが、箸にも棒にもかからず落ち続けました。ドバイでの仕事もそれなりに楽しく、国際機関のことなど忘れかけていた時に、たまたま非常にプライベートな事情からJPOを受け合格し、今UNDPで働いているというのが正直なところです。
国際機関で自分の経験に合ったポジションの募集が出るか、というのは偶然の要素も大きく絡みます。また、そもそも国際機関が採用の際重点を置くのは「国際機関に入りたいかどうか」よりも、「この人を取ればこのポジションの内容をしっかりとやり遂げてくれるかどうか」だと感じます。ですので、国際機関に入ることを目指すというよりは、自分の専門とする分野できちんと実績と経験を積むことを第一として、その上で機会とタイミングが合えば応募する、という心もちで良いのではないでしょうか。
また、国際機関の選考過程は普通の民間企業等と比べればとても長くかかりますので、私が尊敬する同僚は「応募したら忘れる」ことが大事だと良く言っています。
一方で、日々の業務内容自体は資料作り、折衝・交渉、調整等、他の民間セクターや公共セクターの経験も十分に活かせる業務も多くあり、国際機関だからといって何か特別なイメージを持つ必要も無いと感じます。
国際機関には本当に様々な分野の機関があり、業務があります。同僚を見ても民間企業からNGO、公務員まで、いろいろなバックグラウンドを持っています。
最近では民間セクターの資金や技術を取り入れなければならないという動きが国際開発の文脈で活発化していることもあり、民間経験を持った人にどんどんチャンスが出てくると思います。先入観を持たず、自分に適していそうなポジションの募集があればどんどん応募していけば良いと思います。
いずれにせよ、国際機関で働くことをあまり特別なことと捉えず、自分がどういう分野でどういうキャリア形成をしていくのか、その一つとしてしっかり捉えていけば良いのではないかと思います。
神田さんは、今年の3月まで2ヶ月間バングラディシュに出張で行っていたそうです。 なぜ、途上国の開発に携わる仕事が好きかと尋ねたところ・・・・
『日本人は、将来に明るい未来を持っていないと感じる人が多い気がします。 一方、バンクラディッシュは、みんな素直に国が明るくなることを信じていて、10年20年後には、「この国はもっとよくなるんだ!」と希望や野心を持っている人が多い。』 と話してくれました。
バングラディシュは、まだインフラが整っていないことも多いのですが、国民全体で将来的に大きく発展することを信じているエネルギーに魅力を感じたそうです。
UNDPで政府関係者等と実際にプロジェクトに関わっていくことは、苦労もたくさんあるけれど、とてもやりがいのある仕事だったと嬉しそうに話しているのが印象的でした。
「小池絵未のNY発国際機関探訪」VOL.16
出演:神田 匡さん
国連開発計画(UNDP) アジア太平洋局 プログラム・アナリスト
取材地:ニューヨーク
2019年7月更新