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大日向森 国連貿易開発会議投資・技術・企業開発部職員

「国連を目指す方へ」

 


 国連競争試験の難しさは、語学力、専門知識の両方が必要とされることにありますが、それと同時に、試験への備え方が分からない、ということがその難しさを増しているのかと思われます。私は、「経験者」というだけで、競争試験の専門家ではありませんが、競争試験に関する感想をいささか述べさせてもらい、それを国連での就職を志す方の参考にしていただければ幸いです。当然ながら、これは一個人の所見に過ぎません。他に試験を受けた人と話をすると、試験の感想というのは人によりそれぞれ違うようです。ですから、できるだけ多くの方の助言を参考にされる事をお勧めします。

 まず、留学するという事に関して、二三述べたいと思います。国連競争試験受験のために留学すべきか、と考えられている方も多いかと思いますが、「競争試験の為に…」という目的で留学する事は勧められません。現実として、競争試験に合格する人数は限られており、多大な出費と時間を必要とする留学を試験の為だけに試みるというのは、あまりに無謀に思えます。そうではなく、なんらかの理由・目的で留学した場合、競争試験を受ける可能性も出てくる、くらいに考えたほうが良いと思います。

 留学が絶対に必要かという事ですが、「専門知識を得る」という観点からは、留学が不可欠とは思えません。日本ではあらゆる分野の出版物が豊富にあり、またインターネットの普及により、英文での書籍・文献も比較的簡単に入手できるようになった今日、経済などの一般的な科目の知識を身に着けるために、海外に無理して行く必要はないように思えます。

 それでは、語学習得のためにはどうかとなると、やはり留学する事の利点は否定できないと思います。経済学などの科目を海外の大学院等で学び、その過程において外国語で意見を述べる、論文を書くといった経験を積むことが、「職務遂行可能な語学力」を得るために大変効果的であることは明らかです。ただし、これは既に高い語学力がある方の場合です。中途半端な外国語の知識を一年や二年で十分な水準まで高めるというのは困難だと思います。個人差はあるにしても、国際機関もしくは海外での仕事を志す方は、長期間に地道に語学力を高める努力を続ける事が必要かと思います。外国語に触れる時間を一日に三時間持ち、それを五年間続けるくらいの覚悟があってもいいと思います。

 言語を学ぶという事に関してもう少し特定的な事を言えば、文法を完璧に理解しているという事と、英語で物事を論じる力があるというのは別です。競争試験に備える際には、英作文の練習に時間を費やす事が大事に思えます。ただし、練習で書いてみるということではなく、ある程度文章の書ける人に採点してもらうと良いかと思います。

 専門知識及び語学力を得た上で、いざ競争試験に臨む際にどのように備えるかというのは、多くの人が悩むところかと思います。大学入試や資格試験などと違い、参考書があるわけでなく、設問の範囲がはっきりしているわけでもないので、設問の予想が難しいということが、この試験の難しさの一つかと思われます。これに関しては、ただ幅広く学ぶ以外に対策はありません。経済学に限って言えば、経済学の原則をよく理解し、それを様々な状況に応用して、諸問題と論じられるようになる事を目指すべきかと思います。最後に、試験準備ということでは、筆記、つまりペンを使い文章を長時間書き続けるという事を一度は試した方が良いかもしれません。

 私の場合は、競争試験への願書を提出したのが9月。合格の知らせを受けたのが翌々年の1月です。そして勤務の開始は、その年の11月。応募してから2年以上後のことです。周りの人の話によれば、合格の通知から1年以内に採用になるケースは早い方だそうです。競争試験に合格した場合、事務局内のどの機関・任地で働くかという事は、選択できません。組織の方から採用の提示があり、それを受け入れるか否かを決めるだけです。仮に採用の話しを断った場合、次の採用の提示が、どこから何ヵ月後、何年後にあるか知れません。また、採用の提示を二度断ると、それ以上は採用されることはありません。(一度国連に競争試験を通して入ると、事務局内で職場を変える事は出来ます。また採用から二年後、一度は必ず部署を変えねばなりません)。

 このように、採用までには長期を要しますので、試験を受けて何もせずに結果・採用を待つという事はできません。在学中に試験を受ける、もしくは他の職に就きながら採用を待つということになると思います。競争試験の受験を希望される方は、そういった事も考慮しておくべきかと思います。

 最後になりましたが、競争試験は国連「事務局」の採用試験である、という事を理解する必要があります。国連の組織というのは複雑で、どの組織が事務局に属しているか知らない方も多いかと思います。例に取ると、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は事務局に属しますが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は別です。また、国連貿易開発会議(UNCTAD)は事務局に属しますが、国連開発計画(UNDP)は別、など等、名前や機関の役割からでさえ必ずしもはっきりしません。事務局に属さない組織には、競争試験ではなくそれぞれの別の採用制度があります。ある特定の機関で仕事をされる事を望む方は、まずそこから調べる必要があります。

大日向 森 (国連貿易開発会議投資・技術・企業開発部職員)