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       JPO体験記

UNFPAニューヨーク本部 専門分析官 井筒節

私は、現在、国連人口基金(UNFPA)ニューヨーク本部技術協力局にて、精神保健をめぐる問題と、障害をもつ人々のリプロダクティブ・ヘルスを担当する専門分析官として働いています。

「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」―国連教育科学文化機関(UNESCO)憲章前文にある言葉です。紛争や災害、貧困、そして人権侵害の中で人の心の中に生まれる憎しみ、怒り、恥辱感、絶望感、悲しみといった感情が、世界中で更なる憎悪や苦しみを生みだしています。これらの感情は、適切な対処を行わないと、うつ病や自殺、心的外傷、薬物依存などの精神保健上の問題につながりうるほか、復興や開発を妨げ、やがて戦争などの憎しみの連鎖を生みだしかねません。世界保健機関(WHO)によると、現在世界で4億5千万人の人々が精神・神経障害を有しており、年間100万人が自殺により命を落としています。年間100万人という数字は、妊産婦死亡数のおよそ2倍であり、紛争や殺人による死亡数よりも大幅に大きな数字です。自らの行動を少し振り返ればわかるように、人間は感情の生き物であり、人々の行動の多くは感情によって大きく左右されるものです。私は、JPOとしてUNFPAに赴任して以降、UNFPAの活動が、これら人間の心理・社会面に目を向け、被災した人々、偏見を向けられ差別される人々、社会的に弱い立場にいる人々の心の傷を癒し、生活の質の向上に役立つものとなるよう、WHOなどと共にアドボカシーやプログラム・政策に関する技術協力を行っています。

また、国連は世界人口の10%、つまり6億5千万人が障害と共に生活しているとしています。2006年12月には国連総会が障害者の権利条約を採択しました。障害をもつ人々、特に四肢に障害があり身動きに制限がある人々や精神遅滞などの精神障害をもつ人々の中には、強制不妊手術を受けさせられたり、性的暴力被害やそれによる望まない妊娠、HIV感染に苦しむ人々が今も多くいます。そこで、障害の有無に関わらず、人々が安全で満ち足りた性生活を営み、子どもを作るかどうか、作るならばいつ、何人作るのかを自由に決めることができ、HIV/エイズの脅威から開放されるよう、他の国連機関やアカデミア、市民社会と共に取り組んでいます。

国際社会には多くの壁がたちはだかっていますが、国連という場で、このような観点から国際協力に携わることができることを幸せに思っています。特に、国連に精神保健担当官のポストができたのは初めてのことで、これはJPOとして始めさせていただけたからこそのことであったと思っています。新しいことを国連で始める上で、JPOプログラムは数少ない貴重なチャンスを与えてくれる絶好の機会であると思います。

1960年代に国連開発計画(UNDP)がJPOプログラムを開始して以来、JPOプログラムは多くの国連機関に波及し、各国連機関における若手職員採用の主要手段として発展してきました。UNDP内にあるJPOサービスセンターによると、2007年現在、UNFPAでは国際職員の実に14%(約7人に1人)を現JPOが占め、UNDPでは15%、国連工業開発機関(UNIDO)においては18%の国際職員が現JPOとして働いています。JPO以外の国際職員も、元々はJPOとして国連で働き始めた人々が多くを占めています。

今後も、外務省国際機関人事センターのJPOプログラムを通して、より多くの日本人の方々が国連において、より目を向けられることが少なく、より弱い立場にある人々の生活の質の向上に貢献されることを祈っております。

 



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